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いま話題のライアーについて聞いてみた
ゲスト:光枝康子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロナ禍の煽りを受け、いま巷ではコンパクトな楽器が流行しているという。親指ピアノと呼ばれるアフリカのカリンバ、再ヒットの兆しがあるマンドリン、そしてじわじわ来ているのがライアーだという。この楽器、いわゆるハープ=竪琴の原型とされるリラに形状が似ているが、それとは全くの別物なのだという。知れば知るほど、興味がわいてくるライアーの魅力を探るべく、ライアーの講師をされている光枝康子さんにお話を伺った。

 

 唐突にも、「いわゆるリラですよね?」と伺ってみたら、「違う楽器なのですよ。ライアーは、竪琴には変わりはないですが、1926年にできた新しい楽器なのです。哲学者のルドルフ・シュタイナーの思想に基づいて、元は音楽療法のために、彼の没後翌年にお弟子さんが作ったのが、いまの新しいライアーなのです」とのお答えが。てっきり一番古い部類の楽器かと思ったら、まだ100年も経ってない、突然変異的にできた楽器であることに、まずは驚いた。実際に弾いている場面を拝見しても、ハープとは真逆で、弦を爪弾いてもいなければ、引っ張ったりもしていない。昔、母が毛糸で編み物をしている風景を思い起こすような手つきで、指のはらを弦の上を滑らせるようにして、弾くというよりもむしろなぞっているではないか。意外にもハープとは対極だ。膝上から頭までの半径で全てが収まってしまう実にコンパクトな楽器でありながら、鳴りはオルゴールをもっと大きくしたような温和な音でもあり、聴きようによってはハープシコードのような響きも出る。

「指のはらで撫でるように弾くのです。曲を弾かなくても、撫でているだけで弾き手が気持ちよくなる、優しい音が出ますね」と語る光枝さんは、お子様が幼稚園に通っていた時代、園がシュタイナー式教育を標榜しており、ライアーを習っていた先輩ママのレッスンを見に行って、そのまま入門を決め今に至るという。音楽にさほど造詣が深くない人でも魅了され、長きにわたって弾き続けられるこの楽器の魅力を、光枝さんは「実は、その音を聴く人以上に、演奏している本人が一番癒されるところ」と言い切る。思い出してほしい。前段、ライアーは音楽療法のために開発されたと書いた。つまり、弾き手が演奏によって癒しを得て、結果として精神衛生をもたらす構造のため、他の楽器とのアンサンブルを楽しむには向いていない。ピッチも低いので音合わせの時点で合わないのだ。光枝さん曰く、「美しい音を出すのが、最大の目的」の楽器であり、曲をいかに上手く弾くかというよりは、いかに良い音が出せるかというのが評価される世界なのだ。内省的な楽器といえるし、弾き手が独りで類いまれな美しい音と向き合ううちに、つい歌心が芽生え、音に合わせて歌ってしまう・・・それが、今では一般的になっている木村弓の「いつも何度でも」に代表される、ライアーに合わせて歌う弾き語りスタイルを生んだ経緯ではないだろうか。

 

「暮らしの中で、ライアーで折に触れ季節の曲を弾いたりしてみると、生活が豊かになります。殺伐とした世の中で、癒しの楽器と呼ばれるものも多々ありますが、ライアーは突出していると思います。雑多なノイズが溢れる今の世の中、耳を傾けて良質な音を聴く。現代人が忘れてしまっている、音によって心へ語り掛けられるのがライアーなのです」

 まさに、自粛やモラトリアムが求められている今に、ピッタリな楽器ではないか。新しい楽器ながら、古代の楽器のDNAも受け継いでいる。完璧に曲を弾きこなさなければという呪縛からも解かれ、自分にとって一番心地よい音を生み出す。つくづく、ライアーとはユニークな楽器であることを痛感した。同時に、お店で自ら音を出してみると、その真価が実感できる楽器でもある。ぜひ、実際にお店で手に取ってみてほしい。レッスンで体感できれば、なお良い。光枝さんご自身がそうであったように、あなたもその場でライアーの虜(とりこ)になってしまうこと請け合いである。

 

ライアーの演奏動画はこちらから↓

https://youtu.be/QW6kfIuoNz4

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