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ディスク・レビュー:「ラ・ハープ・ファンタスティク/ジュディ・ローマン」

 

 ご存知のように、ハープのCDや音声ファイルのリリースは、プレス数も多くはないことから大手が扱うことが少ないので、情報を手繰り寄せるに苦労することがある。かつてのインディーズの希少盤を探すのに似ているかもしれない。昨年秋にリリースされながら、やっと年末に聴くことができたアルバムがある。「ラ・ハープ・ファンタスティク」がそれだ。

 

 本作は、あのジュディ・ローマンの新作だ。「おい、待てよ」とふと思い検索してみたら、彼女はとうに86の齢を越えている。それはそうだろう。カーティス音楽院で、伝説のサルツェードの直弟子だったのだから。さぞや達観したかと思ったら、彼女はなお学びの徒であったようだ。

 

「古代様式の主題によるヴァリエーション」で師匠の衣鉢をそのまま継ぐのではなく、敢えてムード優先で朗らかな演奏に徹して懐の深さを見せる。「バラード・ファンタスティック」では伝えられたところによると、吉野直子の演奏に感銘して練習したのだという。トゥルニエの「ソナチネ第二番」は、あまりハープで耳にしたことはなかったが、華やかで抒情性に長け、予想外のコードを持ち込んでくるあたり、ハーモニーの可能性を広げていたトゥルニエを研究した結果ではないだろうか。他にも、ピアソラの「オブリビオン」などは、まさかローマンほどの大御所が、晩年に差し掛かってタンゴを嬉々として弾くとは!通常、どの芸事でも御年80を過ぎた表現者に、大抵は「枯れた芸」などと言って渋さを強調するのは、他に褒めようがないからだ。ところが、ローマンの演奏の瑞々しさはどうだ。いま彼女は周囲に、「大好きなハープの曲をできるだけ多く演奏し、録音すること」を目標にしていると口にするそうだが、「好きな曲をできるだけ多く演奏する」というのは、そのまま若い演奏家や一般プレイヤーも目標にできるのではなかろうか。マーキスレコードからリリースされているが、あまり多くはプレスされてないと思うので、もし見つけたら即買い・・だと思う。

 

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