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書評:楽器の科学

 

 講談社のブルーバックスという、普段はけっして手を出さない科学系の新書本に出会った。「楽器の科学」というタイトルで、フランソワ・デュボワが書いている。デュボワ自身はフランス生まれの世界的なマリンバ奏者で、若いころからその深い音楽知識と洞察力で母国では勲章まで受けている音楽家。在日も20年を越えるそうだ。そんな作者が、楽器に焦点をあて、それぞれの楽器がいかに美しい音色を出すのか、構造としくみを紐解いている。特に興味深かったのが、第4楽章のコンサートホールでの音響科学と第5楽章の演奏の極意。前者では、われわれがコンサートホールで耳にする、いわゆる「音響」はどのように作られるのかが、丁寧に解説されている。後者では、それぞれの楽器のエキスパートたちが各楽器の特徴について語っているインタビュー集なのだが、そこでハープの代表としてサーシャ・ボルダチョフが、なんと6ページにわたって楽器としてのハープを熱く語っているのだ。しかも、かなり本音で語っていて、普段のサーシャに接している者でもなかなか聞けない話を、作者デュボワを同じ天才肌の音楽家として認めて、大いに語っているところが面白い。音楽界におけるハープの位置付けなども垣間見れるし、ハープあるあるも言及している。一見難しそうな本書なのだが、案外読みやすい。本書を通じて楽器とその構造からくる音の理解は、確実に進むだろう。目から鱗が落ちる、ユニークな本である。

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